エクステリアと街並みづくり
エクステリアは住宅の外観を決める大変大きな要素です。建物だけで景観を生み出すのは難しく、エクステリアで作り出す空間が家の景観を、ひいてはその街並みの一部ともなります。
近年では前庭やガーデンライトアップが珍しくなくなり、オープン外構でも趣向を凝らした楽しいエクステリアも多く、個人でエクステリアを楽しめる時代であると言えます。
では、思う通りに個性を存分に発揮さえすれば良いのでしょうか?
★CONTENTS★ ◇街並みとは |
◇街並みとは
総務省平成17年政策白書では、地方自治に関する章で
「地方自治と言いつつローカルな公共事業に国が関与しており地方自治体の独自に地域の発展に取り組む意欲を弱めた結果、全国で同じような街並みができ個性が失われている(一部抜粋)」
とレポートされています。
自治体の都市計画による街並みづくりが滞ると、家を建てる住民も指標が無く“なんとなく”建てることになり、結果「美しい」とは遠いところにある特徴のない退屈な街並みになってしまうのかもしれません。
また、個々に個性を出し統一感のない街並みも、到底美しいとは言えません。
エクステリアと言う概念は文化の成熟から生まれてきたにも関わらず、それではもったいない事この上ないですよね。
◇街並みをつくる要素
2023年10月のgooランキング「街並みが美しいと思う都道府県ランキング(ユーザーアンケート集計形式)」では京都府が1位に輝いていましたが、他の上位の都道府県もなぜ街並みが美しいのでしょうか。
答えを言ってしまうと、「美しい街並みであり続けるための努力をしているから」です。
前述のランキング結果は
1位:京都府
2位:北海道
3位:宮城県
と言う結果でしたが、理由としてこの3道府県に共通しているのが「自然と都市の調和」「歴史を感じられる」の2点でした。
東山から京都市外を臨む
京都府の場合、お住まいの方はご存知だと思いますが景観に関しての条例・規則が沢山あります。
特に京都市の「京(みやこ)に景観ガイドライン」には、「京都の景観は,豊かな自然とのかかわりの中で,永い歳月をかけて人々の暮らしや生業とともに育まれ,受け継がれてきた文化的景観でもある。」とあり、育まれてきた文化的景観を守り、育て、つくり、生かしていくための景観条例であることがわかります。
弊社所在地である宇治市の景観条例にも
「市民は、(中略)自らの役割及び責任 を自覚するとともに、まちづくりへの参画に努めなければならない。」
「事業者は、自らがまちづくりの担い手であることを認識し、良好な居住環境の整備及び景観の形成に努めなければならない。」
と定められています。
街並みをつくり守る事は、自治体と住民・事業者が一体となり取組むことで可能になるのですね。
◇エクステリアと街並みの関係
大都会の複合ビルと庭園(六本木ヒルズ)
先日の「エクステリアと外構って同じ意味?何が違うの?」の回で書きましたが、エクステリアと言う概念は近代化に伴う車社会の到来など建築や街並みと住環境の関係性が変化したことにより生まれました。つまりは、エクステリアが街並みをつくる要素の1つだと言えると言う事です。
大きな商業ビルや公共建築物のエクステリアなどは、それ自体が街並みのシンボルとなっていることがありますよね。
それほどエクステリアとは、大きな効果を持っているのです。
夜の大都会の複合ビルと庭園(六本木ヒルズ)
京都市の景観計画を構成している大きな要素として、
・建築物の高さ
・建築デザイン
・眺望景観
・広告物
上記の4つがあります。エリアによって細やかに規定が造られており、一般住宅にも例外なく適用されます。
例えば、祇園を歩くと「町家に犬矢来」を沢山見かけると思いますが、これも条例によって「歴史的様式で建築する」「塀・柵・照明器具等の意匠は和風」「他工作物はできる限り自然材」と定められているためです。
そうなれば自ずと、地域で昔から用いられてきたデザインを採用したり寄ったりし、景観が保たれると言うわけです。
エクステリアがいかに街並みをつくるか、「街並みが美しい」と評される街はよく知っているのですね。
◇エクステリアの考え方
エクステリアをつくっていく上で、街並みとの関わりを考えると大切なポイントは
〇自然や街並みとの調和
〇一体感の演出
この2つになろうかと思います。
それぞれについて考えてみましょう。
□ 自然や街並みとの調和 □
街並みと調和するためには、デザインとカラーがとても重要です。
先ほどの祇園の例で言うと、コンビニの看板が通常のコーポレートカラーではないのは、条例で色彩の規制があるためです。
エクステリアのデザイン・色選びは大変街並みに影響を与えるため、個性の演出は周辺と調和する、逸脱しない範囲で留めましょう。
街並みの中で最も目に触れるのは、フェンスや門扉です。特に広範囲に渡るフェンスは、視界を遮る効果を持つ点でも街並みへの影響は大きいと言えます。フェンス選びは周辺の住宅もよく見ながら、調和するデザイン・カラーを選びましょう。
□ 一体感の演出 □
条例で意匠に制限があると、“目立たなくしなければならない”と感じてしまいそうですが、少し視点を変えてみましょう。目立たなくするのではなく、「一体感を演出する」ことで、調和できると思いませんか?
街並みの特徴を取り入れてそこに個性を吹き込み、街並みと調和する要素と個性を「一体化」して表現するのです。
京都創業の“佐川急便”は祇園にサービスセンターを置き“祇園佐川急便”とし、意匠もこだわってつくられた事が話題となりました。街並みに馴染みながらも目を引くよう工夫されており、配送用の三輪自転車や台車のデザインにまでこだわりが見えます。
まさに「一体化」の良い例ではないでしょうか。
◇そこに住まう人々が街並みをつくると言うこと
「エクステリアが街並みをつくる」話をここまで書いてきましたが、つまりは<そこに住まう人々が街並みをつくる>と等しいと言えることがわかると思います。
宇治市の「市民は、(中略)自らの役割及び責任 を自覚するとともに、まちづくりへの参画に努めなければならない。」と言う条例は、まさに理に適ったものと言えますね。
新築やリフォームでこれからエクステリアをつくる予定の方はぜひ、お住まいの街を歩いて街並みを観察してみてくださいね。
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